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学生の部【​入賞】

『三者の手』周 逸喬(京都府)

渓流のおいしい水を飲みたい原始人が器を持たずに、両手で掬いました。手は一番最初の器になっていると考えています。

茶席が設けられる時、皆様の目が自然に茶人の器用の両手に注目しています。この手が持つ茶道具は、茶道具を作る制作者の手を通して生まれてきました。そして、それぞれの使う手に渡されます。手の形の器を作り、三者の「手」がどのような交流の形態になれるのかを楽しみにしています。

周逸喬 Profile

中国生まれ、2021年京都市立芸術大学大学院美術研究科漆工卒業、現同大学博士課程在籍。作品は京都芸大大学院市長賞、韓国清洲工芸ビエンナーレ受賞、百貨店、東京都美術館などに展示された。

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【講評】
前﨑信也氏

美術工芸研究家・京都女子大学教授

学生の部とは思えない技術の高さです。作品がこの形をしている理由もきちんと説明できています。この作品が持つ意味や社会での役割について、解説でもう少し触れられていたらさらに良かったでしょう。
今後に期待しています。ありがとうございました。

佃 梓央氏

煎茶家・一茶庵宗家嫡承

手をモチーフにしたこの作品は文人茶(煎茶)で使う炉(=涼炉)を置くための台、炉台として使うことができると思いながら見ていました。この作品を制作された作家さんは留学生さんで、日本人作家による工芸品の持つ繊細さ、スマートさとは全く違う感性を持たれていて、日本人にはない大らかさとノイズがあり非常に魅力的な作品でした。

江戸時代以来の日本の文人茶に浸ってしまっている私のような人間にしてみれば、やはりその世界から抜け出したいという願望があり、抜け出す一つの道筋として、中国近代絵画や中国現代絵画の世界を設える機会を得ています。例えば中国近現代絵画を掛けてみて、中国清時代末から中華民国ぐらいに制作された、鬼の面が施された涼炉を使ったとして、その台として上述のような感性で制作されたこの作品を使ってみたら、面白い掛け合わせになるのではないか、と想像しました。「怖い鬼の顔」の下に「手をモチーフにした台」が敷かれている、魔除けのような文脈で遊べそうです。

ただ作品としてもっと力が、つまり存在感が欲しいなとも思いました。古い作品と拮抗していけるような存在感。その答えが色なのか、造形力なのか、手のデッサンのリアリティなのか、手を語る文脈力(例えば力士像のように悪を寄せ付けないための手といったストーリー性)なのか、それはよくよく研究していただきたいところです。

学生さんであることの利点を生かし、モチーフと時間を掛けてしっかり対話し、素材としっかり語り合って、名品に触れて、より進化した「手」を次回も期待したいと思います。
ご受賞おめでとうございます。これからのご制作を楽しみにしております。

中山福太朗氏

​茶人・会社員

手に興味がある、という強い気持ちが作品に感じられました。何か分からないけれど自分は好き、そしてそれはお茶の中に居場所があるのではないか、と思われたのなら、正解です。確とした自分の「好き」は、それがくっきりしていればするほど、茶の中で輝きます。その際、モチーフの選び方は非常に難しいのですが、手という誰もが物語をもっており、かつコミュニティごとに相当範囲のある意味をもつモチーフを選べたことで、様々な使われ方ができるようになったと思います。技術も確かで、丁寧な作りです。ひとつ指摘をするならば、ある程度、どのように使うものかを決め込んで作ると、茶で使う上で重要な、寸法のちょうど良さを作り込めるのではないかと感じました。

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