top of page
検索
  • 執筆者の写真若王子倶楽部 左右

『「珍品」好みの審査員として』 煎茶家・一茶庵宗家嫡承 佃 梓央

「何これ⁉」とニタッとしながら受賞作品すべてをテーブルの上に並べて見ていました。今回も、イイ意味での「珍品」を選ばせていただくこの公募展のカラーがはっきりと出たように思います。

 私が審査の時に意識していることは二点です。

 古い工芸品や美術品と並べたときに、負けずに主張してくる力があり、それが古い工芸品と和音であれ不協和音であれ何かを奏でてくれるかどうか。

 もうひとつは、映像や音楽、言葉、空間、もちろん造形物も含め、現在の芸術家や非芸術家が制作する様々なメディアとともにご応募作品を用いてみることを想像したとき、何か魅力的な感覚を与えてくれるかどうか。

 今回ご応募いただいた作品は、後者に叶う作品が多かった印象を受けています。

 「ティー」すなわち「茶」という言葉を冠にしている公募展ですからともするとそこに応募していただく作品は、前者を狙っているのに力のない痩せ衰えた作品であったり、既存の作品の、生命力を失わせてしまっただけのコピーであったり、約束事にがんじがらめの自由のない作品であったりしてしまうものです。

 しかし今回ご応募いただいた作品の多くにそうではない魅力がありました。

 古いモノ(茶道具に限らず)や現代の様々なメディアと同時同場に存在させたとき、和音でも不協和音でもとんでもない何かを奏でてくださる珍品にこれからも出会いたいと願っています。

最新記事

すべて表示

『狭さと深さ』 茶人・会社員 中山福太朗

多くの作品のご応募、ありがとうございました。 なぜ「ありがとうございました」なのかと言えば、この公募展は、私たちの仲間を探しているようなものだからです。 そこに参加して下さったことがうれしい、という思いからの言葉です。 勿論、応募してくださった方にそのようなつもりはないでしょうが、私はやはり、仲間を見つける目で作品を拝見しています。 そういう意味で、この公募展は優劣を決めるためのものではありません

『受賞作品の共通点 ―現代社会がクリエイターに求めていること―』 京都女子大学 前﨑信也

新型コロナウィルスが世界を席巻して2年が経ちました。その間に文化をとりまく環境も大きな変化を見せています。カタチを持たないデジタルアートが驚くような価格で取引されるようになったことと時を同じくして、お茶やお花といった、人に会うことが前提の文化にまつわる道具への需要は減退しています。 こんな悩ましい世界に、新しいお茶の道具を提案するこの公募展。第1回で残念だったことは、応募作品の多くが「使い古された

次代へ繋ぐエレメント、ポストコロナの新たな価値を

世界を襲った新型コロナウイルスは、これまでの働き方や暮らし方を大きく変えました。新たなテクノロジーを導入し経済的豊かさをもたらした近代に代わる新しい価値をどのように築くか、デジタル化の一方でリアルな「場」の見直しも進み、日本の喫茶文化をリードしてきた京都の役割が改めて問われています。 明治の京都づくりに尽力した田能村直入は、日本最初の京都府画学校(現・京都市立芸術大学)の開設に奔走し初代校長を務め

bottom of page