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  • 執筆者の写真若王子倶楽部 左右

『狭さと深さ』 茶人・会社員 中山福太朗

多くの作品のご応募、ありがとうございました。

なぜ「ありがとうございました」なのかと言えば、この公募展は、私たちの仲間を探しているようなものだからです。

そこに参加して下さったことがうれしい、という思いからの言葉です。

勿論、応募してくださった方にそのようなつもりはないでしょうが、私はやはり、仲間を見つける目で作品を拝見しています。


そういう意味で、この公募展は優劣を決めるためのものではありません。

賞を設けておいて、このようなことを言うのは妙だし、ずるいと思われるかも知れません。

ですがあえてそう言うのは、本展は選考のプロセスこそ重要であると思うからです。

作家が先人の足跡を辿りつつ、今を受け止めるモノを作るにはどうするか。

それは、使い手を含めた「今」にきちんと向き合うしかありません。


多くの情報が容易に入手できる時代になりました。

茶の湯が立ち上がった時代にくらべ、広く、詳細な情報を入手できているはずなのに、

その頃に起こった文物を未だありがたく崇拝しているのはなぜでしょうか。


本展は、公募展として大きな規模のものではないでしょう。

ですが、規模や広さを求めた結果、茶は何を生んだでしょうか。

小さなコミュニティの歴史に消える1点であっても、ある深度に至った狭く深い内輪ノリは、時間を貫く普遍性を獲得します。

今に向き合った、狭く深い極が多く存在する。そんな世の中が、文化のようなものを生むのではないかと、最近は考えています。

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