世界を襲った新型コロナウイルスはこれまでの価値観を一変してしまいました。
これまでの働き方や暮らし方の見直しが求められている今ですが、時代を生き抜いた先人たちはどのように道を拓いたのでしょうか。
ギャラリー左右は、わが国最後の南画家といわれる田能村直入が晩年を過ごした寓居の一角にあります。日本初の京都画学校(現・京都市立芸術大学)の開設に奔走し初代校長を務めた直入は、その後内国勧業博覧会の京都開催に尽力するなど、時代の転換期に大きな役割を果たしました。
一方煎茶の復興にも貢献した直入は、コミュニケ―ションの場として煎茶を愉しみ、客人と文化や産業振興の秘策を練ったと言われます。直入にとって煎茶はインタラクティブなコミュニケーションの「場」でありました。
第2回ティー・エレメント公募展は、歴史に学び先人の知恵を辿りながら、新たな「解」を求めようとしている時代に、喫茶とは何か、抹茶や煎茶など日本人が育んだ喫茶の要素・元素(エレメント)は何か?について、これまでのあたりまえを問いたい、というものでした。
1次審査ではZOOM審査を導入し、使うひと(審査員)とつくるひとが向き合い、茶道具とは、そして茶道具を介してどのようなコミュニケーションが図りたいかなどについて意見を交わしました。1次審査をパスされた方は、自らと葛藤しながらの制作だったと思われます。
第2回は日本の文化をリードしてきた京都で「喫茶道具を見直すきっかけにしたい」との思いを共有する方々で組織した「次代の喫茶文化をつくる会」との共催となりました。
そして前﨑信也氏(美術工芸研究家・京都女子大学准教授)、中山福太朗氏(茶人・会社員)、佃梓央氏(煎茶家・一茶庵宗家嫡承)が前回に続き審査を引き受けてくださいました。審査員の3名は直入と同じように時代を拓くイノベーターです。
公募展に果敢に挑戦された方々が、コロナを乗り越えた未来の世界において、高い精神性とチャレンジ精神をもって、茶道具を含む日本の工芸美術の発展に貢献されることを願っております。そしてつくるひとと使うひとが共鳴しあい、新しい価値が生み出せるような「場」として、喫茶を愉しむ機会を増やしていければと思っています。
若王子倶楽部 ギャラリー左右
次代の喫茶文化をつくる会
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