『理由がわかるようにしたい。ただそれだけです。』 前﨑 信也 (美術工芸研究家 京都女子大学准教授) 一般的な公募展では、締切日までに作品を送っていただき審査員が入選作・受賞作を 選び発表します。受賞作については評価した理由を説明しますが、選ばれなかった 作品がなぜ選ばれなかったのかを伝える機会はなかなかありません。そして、審査を していると、「この作品はここをもう少しこうしていたら良かった」とか、「そもそも この作品はこの公募展の求めている作品ではない」とか、作品が完成する前に作者と お話をしたかったと思うことが少なくありません。 昨年開催した第1回ティー・エレメント展の審査でも同じことが起こりました。特に、 第1回ということもあり、この公募展が何を求めているのかがはっきりしていません でした。それにもかかわらず、多くの方に出品していただき、ありがたいと感じると ともに、「どうしたら我々審査員が求める作品がどういうものかが伝わるのか」という 悩みが残った審査となりました。 対策として昨年は、出品作すべての作者の方に審査員としてコメントを送らせて いただきました。 しかしながら、審査後に伝える方法では、コメントを受けて異なる作品が生まれたと しても、翌年の展覧会まで待たなければなりません。それでは、変化し続けるこの社会 ではスピード感が足りない。そこで思いついたのが、一次審査で作者の方々に作品に ついてお話いただき、それに対して審査員がそれぞれの見方を説明する場を設けるという 方式です。 時間が限られていたので、十分お伝え出来たか分かりませんが、審査員の視点から、 より評価しやすい作品にするにはどうしたらいいかをお話ししました。 日常的に茶にまつわる道具を見て、使っている立場として、どのような作品であれば 「手にとってみたい」と思うのかをお伝えしたとも言えるかもしれません。 審査員の見方が、参加して下さった方々の今後の制作の役に立つことがあれば 嬉しいです。ありがとうございました。
Profile
2000年龍谷大学文学部史学科卒業、ロンドン大学SOAS留学、博士号(中国美術史)取得。
米国クラーク日本芸術研究所ピーター・ドラッカー・フェローシップ、中国留学等を経て
09年ロンドン大学で博士号(日本美術史)取得。15年より現職。
同年からグーグルと共同で「Made in Japn:日本の匠」プロジェクトに携わる。
京都市立芸術大学芸術資源研究センター、立命館大学アート・リサーチセンター研究員などを兼務。
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